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俺という駄馬

勝ったアルアインは9番人気だったんだね。

てことは、あまりみんなに期待されていなかったんだね。

競馬って面白くてさ、

1番人気の馬が必ず勝つわけじゃないんだ。

レースが始まる前に、

誰が1番人気で、みんながその馬に期待しています、

誰が2番人気で、その次に期待されています、

誰が18番人気で、ぜんぜん人気がありません、

って、そういうのがわかっちゃうんだけど、

馬はそういう事情も知らずに、

ただ一生懸命走るんだよね。

1番人気の馬も、3番人気の馬も、8番人気の馬も、18番人気の馬も、

みんなみんな一生懸命走るんだよ。

レースには階級があって、

高い階級のレースには出られない弱い馬もいる。

なにかの間違いで、たまに弱い馬が階級の高いレースに出ることもある。

ひとつのレースで18頭走るのならば、勝てるのはたった1頭だけ。

それ以外の17頭は負けてしまう。

ほぼみんな負けちゃうんだ。

ずーーーーっと勝ち続ける強くて立派な名馬もいるけど、

生まれてから死ぬまで、1回も勝てずに終わってしまう馬もいる。

俺は若い頃1年半という短い期間だけどホッカイドウ競馬で働いていて、

そういう駄馬のお世話をしてきたんだ。

命を削って走る馬たちに、どれだけ勇気をもらっただろう。

弱くて勝てないのに、それでも一生懸命走る馬たちに、どれだけ励まされただろう。

人間も馬みたいなもんでさ、

人気というか、レッテルを貼られているわけよ。

みんなそうだよ。

「あいつはこういうヤツだ」

そんなふうに決めつけられている。

誰が1番人気で、誰が2番人気で、

そんなことを争ったりしている。

くだらないなーって思う。

わざわざそんな順番決めなくても、

みんな素晴らしいじゃんか。

レースで走る馬は、みんなカッコいい。

1位になった馬もカッコいいけど、

2位の馬も、3位の馬も、4位の馬も5位の馬も、

ビリの馬だってカッコいいよ。

一生懸命走っているだけで、カッコいい。

生きているだけでカッコいい。

100回負け続けた馬だってカッコいい。

一度も勝てないまま引退してしまう馬だって、カッコいい。

俺はどちらかというと、いや、

俺という馬は、ハッキリ駄馬なんだ。

誰からも期待されていないし、

誰からも人気がない。

実際走るのも遅い。

だから俺は、

大きなレースで1位になるようなすごい馬よりも、

ぜんぜん人気のない、ぜんぜん勝てない、足の遅い馬に、感情移入してしまう。

勝ち続けることなんかないよ。

たまに勝てればいいじゃん。

たまに勝てなくてもいいよ。

人生でたった1回でも、勝てればいいじゃん。

勝てなくてもいいよ。

ただ走るだけでも、あなたはカッコいいから。

負け続けても、それでも走るつづけるあなたは、すごいから。

勝ち続ける馬と同じくらい、

あなたはカッコいい。

たった1回でも、勝てたら素晴らしい。

たとえ勝てなくても、「おしかったね!」と言えるくらい走れたら素晴らしい。

ずっと走り続けて、ずっとビリでも、挑み続けた馬は素晴らしい。

馬ってね、みんな素晴らしいんだよ。

俺は本当にダメなヤツで、大きなレースに出たこともないし、

肝心なところで負け続けて、もしかしたら今まで一度も勝ったことがないかもしれない。

これからも、一生勝てないかもしれない。

でも俺は、そんな自分を愛している。

俺という駄馬を愛している。

勝てないくせに、

弱いくせに、

情けないくせに、

ダメなくせに、

ちからがないくせに、

それでも生きている俺を、

俺は応援したい。

こいつに「がんばれー!!!」と声援を飛ばしたい。

誰が応援してくれなくても、

俺は俺の応援をする。

俺は俺を見捨てない。

そう決めている。

馬はかわいい。

人もかわいい。

そこにいてくれるだけでありがたい。

強くなくてもいいよ。

勝てなくてもいいよ。

負け続けてもいいよ。

肝心な場面で逃げてもいいよ。

怖くなって怖気づいてもいい。

絶対に勝たなければいけないレースで負けてもいい。

どんなにみっともない姿をさらしてもいい。

それでも俺は、あなたを応援するのをやめないから。

俺は俺を見捨てないし、

俺はあなたを見捨てない。

みんな一生懸命生きてる。

そんなみんなのことが、大好きだ。

もしかしたら何かの間違いで、勝てるかもしれない。

そう思いながら生きているけど、

白飯号、

おまえは生きているだけで素晴らしいんだよ。

アルアイン1冠 初G1制覇で松山騎手涙/皐月賞